宇宙企業の記事は、たいてい「打ち上げが成功した」で終わります。ところが決算を開くと、伸びている事業と、遅れている事業が、同じ会社の中で同時に走っていることが分かります。Rocket Lab の2026年上期がまさにその形でした。
売上は前年同期の1.6倍。打ち上げ本数は9月2日までで15回。それでも、この会社の将来を決めると言われている大型ロケット Neutron は、まだ一度も飛んでいません。
・2026年上期(1-6月)の売上は 434.4百万ドル。前年同期の267.1に対して約1.6倍
・4-6月だけで234.1百万ドル。前年同期比 約1.62倍(同期は144.5)
・営業赤字は上期 113.5百万ドル。前年の118.8からわずかに縮んだ
・Electron は9月2日に通算94回目、2026年の15回目。2025年は通年で21回
・Neutron は1月21日のタンク破裂で遅れ、打ち上げ台への到着目標は2026年第4四半期

上期の数字を、前年と並べる
まず提出書類の数字です。2026年8月10日にSECへ出た四半期報告書(Form 10-Q)から取りました。単位は百万ドルです。
| 項目 | 2026年1-6月 | 2025年1-6月 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 434.4 | 267.1 | 約1.63倍 |
| 研究開発費 | 162.9 | 121.2 | 約1.34倍 |
| 営業赤字 | 113.5 | 118.8 | 約0.96倍(縮小) |
| 純損失 | 94.3 | 127.0 | 約0.74倍(縮小) |
売上が6割増えているのに、赤字は増えていません。研究開発費は34%増えているので、費用を絞ったわけではない。売上の伸びが費用の伸びを上回った、という形です。
4-6月だけを取り出すと、売上は234.1。前年同期は144.5だったので、こちらは約1.62倍です。上期全体とほぼ同じ倍率で、伸びが四半期の一発ものではないことが分かります。


手元資金は6月末で現金2,129.5百万ドル、これに短期の有価証券172.7百万ドルが乗ります。3月末の現金は1,205.5だったので、4-6月のあいだに現金がおよそ9億ドル増えています。営業でこれだけ稼いだわけではないので、資金調達によるものと読むのが自然です。
打ち上げ本数は、去年の通年に迫っている
数字と別に、実際に何回飛んだかを見ます。同社の発表によると、2026年9月2日の打ち上げがElectron の通算94回目、2026年の15回目でした。顧客は日本のSynspective、ミッション名は「Owl Around The World」です。
2025年は通年で21回。9月2日時点で15回なので、このペースなら年内に昨年を上回ります。

本数が増えると、1本あたりの固定費の負担が軽くなります。売上が6割増えて赤字が増えなかった背景には、この回数の増加があります。打ち上げは、飛ばすほど1回が安くなる商売です。
Neutron は、1月のタンク破裂から遅れている
ここからが、数字には出てこない話です。
Neutron は Electron より大きく、第1段を回収して再利用する設計の機体です。同社の売上をもう一段上げる本命として扱われてきました。当初は2026年の半ばに初飛行の予定でした。
Spaceflight Now が2026年8月10日に報じたところによると、1月21日、第1段の燃料タンクが水を入れる試験(hydrostatic pressure trial)の最中に予期せず破裂しました。これで日程が押し、初飛行は年の後半へ動いています。
同社の目標は、2026年第4四半期に打ち上げ台へ機体を届けること。ただし同記事は、実際の打ち上げが2027年へずれ込む可能性にも触れています。バージニア州の発射台では、機体を組み上げた状態での静止燃焼試験(integrated static fire)がこれから控えています。
創業者でCEOのPeter Beck氏は、同記事で開発の考え方をこう説明しています。「1号機のために早く台へ着くことが目的ではない。10号機までをどれだけ短い時間で到達できるか、という話だ」(”it’s not just to get to the pad quickly for flight one…it’s really about how do we get to flight ten in the shortest time possible”)。段階の試験については「完全に燃料を入れた機体が台の上にあるので、いつもアドレナリンが出る」とも述べています。
初飛行では第1段の回収を試みません。回収は2号機から、着陸用のはしけを使って行う計画です。
アナリストは何と言っているか
数字と現場の話に、市場の見方を1つだけ添えます。当サイトは銘柄の推奨も目標株価も出しません。ここに書くのは「誰がどう言ったか」だけです。
- S&P Global が集計した18人のアナリストのコンセンサスは「Buy」、平均目標株価は112.65ドル(第2四半期決算の後)。
- Cantor Fitzgerald の Andres Sheppard 氏は、目標株価を96ドルから122ドルへ引き上げ、Neutron を同社の「最も重要な材料(most material catalyst)」と呼んでいます。
- 第2四半期の1株あたり損失は0.08ドルで、事前の予想(0.06ドルの損失)より悪い。一方で売上は予想の230.94百万ドルを上回りました。
面白いのは、強気の理由が「まだ飛んでいない機体」に置かれていることです。いま稼いでいるElectronではなく、Neutronが評価の中心にある。裏を返せば、Neutronの日程が動くたびに評価も動きます。
よくある疑問
Q. 売上が1.6倍なら、もう黒字は近いですか
上期の営業赤字は113.5百万ドルで、売上434.4に対して26%です。前年は44%だったので比率は下がっていますが、まだ4分の1が消えている状態です。研究開発費が162.9とNeutronの開発に厚く乗っているあいだは、この比率がすぐゼロに近づく形にはなりません。
Q. どこで確認できますか
数字は Rocket Lab の2026年6月期 四半期報告書(Form 10-Q) から取りました。打ち上げ回数は 同社の2026年9月2日の発表、Neutron の日程は Spaceflight Now の2026年8月10日の記事です。いずれも無料で開けます。
Q. 投資判断に使えますか
使えません。ここに並べたのは提出書類の数字と、報道された出来事と、他社のアナリストの発言だけです。当サイトは売買の判断を書きません。
次に見る場所
この会社を追うなら、見る順番は決まっています。①打ち上げ本数が年内に21回を超えるか ②Neutronの機体が第4四半期に台へ届くか ③静止燃焼試験が通るか。売上は①の結果として動き、評価は②③で動きます。
同じやり方で量子の4社も並べました。量子4社|直近四半期で向きが逆になったでは、年次だけを見ると結論が逆になる例を扱っています。期間の取り方ひとつで絵が変わるのは、宇宙でも同じです。
もうひとつ、この記事と対になる形があります。防衛2社|売上は伸び、利益は消えたで扱った Kratos は、売上が3割増えた四半期に営業損益がマイナスへ落ちました。Rocket Lab は上期の売上が6割増えて赤字が縮み、Kratos は4-6月の売上が3割増えて赤字に落ちた。期間の長さが違うので倍率をそのまま比べることはできませんが、伸びの大きさと利益の向きが結びつかないという点は共通しています。
次の四半期報告は11月前後です。そのとき、このページの表は置き換えます。1月に割れたタンクの話が、そのころどう決着しているか。数字より先に、そこを見ることになりそうです。








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